宝石の割れ

割れたオパール

ダイアモンドは永遠に・・・とよく言われますがダイアモンドを含めて宝石は取り扱い方により永遠は一瞬になることも良くあります。宝石の耐久性には化学的安定性(薬品、紫外線、etc)、硬度(引っかき強さ)、靭性(粘り強さ)があります。例えば、ダイアモンドは一番強いと思っている肩が多いと思いますがそれはあくまで硬度の強さであって粘り強さではありません。ハンマーでダイアモンドを叩けば割れてしまいます。ダイアモンドもある意味永遠ではないのです。粘り強さはヒスイのほうがダイアモンドより強く割れにくいのです。ダイアモンドがヒスイに粘り強さで劣る理由は宝石の構造にあります。
割れの種類(へき開性、裂開性、断口)
宝石の割れには種類があります。物理的な衝撃が加わったときに結晶の特定方向に割れやすい性質を「へき開性」といいます。結晶の宝石というのは、規則正しく原子が並んでいますがその結合の強さはどの方向も一定ではありません。弱い方向と強い方向はありますから衝撃が加わると結合の弱い方向が割れてしまいます。よく「竹を割ったような性格」といいますがこれは竹の縦方向にスパッと割れた真っ直ぐな性格を言い現しています。
この『スパッ』とわれる方向が宝石のへき開方向です。
へき開方向はスパッと割れていますからその断面は滑らかな割れです。
横に衝撃を加えて割れたら性格ならぐちゃぐちゃで最悪の性格をあらわしことになってしまいますが、宝石ではこの方向の強さがとても重要です。宝石の強さの方向を知らないと加工時の時など取り返しの付かないことに遭遇するからです。『スパッ!!』とは性格ならはっきりしていて気持はよいですが、宝石の場合はスパッと割れてドッと汗がでます。このへき開性に似ていてスパッと割れる割れ方があります。
双晶面に沿って割れる場合がそうです。
このときの割れ方もきれいに割れます。
この割れ方を『裂開性』といいます。ムーンストーンなどはこの例です。『へき開性、裂開性でもない普通の割れを『断口』といい、断口にはその割れの形状によりさらに分類されます。


オパールは単結晶の宝石ではないので『あっ!!』と思った時はあらゆる方向に割れてしまいます。
宝石も人間もいろんな性質、性格があるようです。
宝石も人間も性格をよく知った上で付き合いましょう!!
どちらも割れてからでは遅いですから・・・



HPで宝石専門用語辞典をつくっています。難しい専門用語がありましたらどうぞ・・・
http://gem2.net/ja/yougo.html

類似石の鑑別・アベンチュレッセンス

アベンチュレッセンスとは宝石の名前ではなくてスターとかキャッツなどと同じ特殊効果の名前です。天然のアベンチュレッセンスは宝石内部に他の小さな鉱物の結晶がいっぱい入っていて光があたるとキラキラする効果のことを言います。

この特殊効果を持つよく知られた宝石は『アベンチュリン・クォーツ』『サンストーン』です。写真はわたしの自慢のサンストーンです。




約4cm で 162ct あります。大きいのでキラキラがよくわかります。

写真に写っている『はんこ』は自慢のサンストーンに似ていますがこれは天然石ではありません。『ゴールド・ストーン』和名を『砂金石』といいます。正式にはアベンチュリン・ガラスといい人工の特殊ガラスです。販売している方がゴールド・ストーン(砂金石)を特殊ガラスだと知らない場合もありますので注意して下さい。

天然石と人工石の違いはルーペ(拡大鏡)ですぐに鑑別できます。

ゴールド・ストーンのキラキラは金属(銅)の小さな結晶です。拡大してみました。



本当のアベンチュレッセンスは天然の鉱物の小さな結晶です。天然の結晶ですから不均一です。それぞれの小さな結晶が『天然の結晶です』ってアピールしているようです。




キラキラひかる訳は内部からのインクルージョン(内包物)が原因です。
美しさは肉眼でわかりますが、ウチに秘めたキラキラは近寄ってみないとわかりません。
宝石も人も自分で成長した結晶のほうがやっぱり魅力的のようです。

類似石の鑑別・アンダリュサイト

ホンマモンとかニセモンとかではなく天然石同士で似ている宝石を“類似石”といいます。見た目は似ていても性格まではそっくりではありません。それは人間も同じです。

どんな時にどんな行動をするかでわかってしまいます。でもそれは、その人の性格を知っているからわかります。ここに2つのよく似た宝石があります。このままでは何かわかりません。


でも多分この色の宝石は、あの宝石だろうなと想像がつきます。そこでその宝石の性質を利用してみます。偏光レンズを90°回してあげるとほらほら・・・右側の宝石は真っ赤になりました。



でしゃばりなあの人も偏光レンズを90°回して見ると・・・
以外と、真っ赤になる恥かしがり屋さんかも知れません。

髪飾り

洋服にはジュエリーが良く似合います。ジュエリーを身につけて洋服もまた活かせれます。着物は着物だけでいいです。着物はそれだけで完成品だからです。着物に似合う装飾品があります。髪飾りです。櫛(くし)、簪(かんざし)、笄(こうがい)がその代表です。
想像してください。着物をきた女性の姿を・・・なんの違和感もなく美しいでしょう。では、もう一度想像して下さい。見事に結いあげられた日本髪を・・・その想像には自然と髪飾りがあります。髪飾りがなければその髪形は完成しません。日本髪と髪飾りは運命をともにしてきました。現代の髪形はもちろん日本髪を結うのはごく限られた方だけです。髪飾りは日本髪とともに見かけなくなりましたがその伝統と技術は今でも見ることができます。
髪飾りの材料にも興味を惹かれます。鼈甲、偽甲(牛爪など)、ガラス、サンゴ、メノウ、象牙、ヒスイ、セルロイドなどがあり更に螺鈿象嵌、漆塗り、蒔絵などの技術も髪飾りの歴史でみることができます。



 櫛




 簪




 笄




言い忘れていましたが、日本の歴史のなかで髪飾りが日常に使われていない時代がありました。
日本女性の髪そのものが「美」とした時代それは、平安時代です。時の流れとともに新しく生まれるものそして消えていくものがありますが、『美』と感じることはいつの時代も消えません。

張り合わせ石Composite Stone

張り合わせ石拡大写真

模造石のなかでも面白い模造石はこの『張り合わせ石』ではないでしょうか。駆り合わせ石とは、2つ以上の天然石又はイミテーションを組み合わせ接着している“宝石?”のことです。その目的は高価な天然宝石に似せることにあります。
従って、故意に作ろうと思えばその組み合わせは無限にありますがその目的に沿った代表的な『張り合わせ石』はある程度限られてきます。張り合わせ石には、2つの素材からなる『ダブレット3つの素材からなる『トリプレット』があります。
もちろんその組み合わせは『模造石』本来の目的に沿った組み合わせです。その組み合わせには、それぞれそれなりのこだわりと理由があります。ですから、張り合わせ石を見ながら何故その組み合わせなのかを考えるのも勉強になります。


張り合わせ石の組み合わせ
クラウンとパビリオン(トップとベース)の接合はダブレット
・同種の天然宝石の素材の接着は『本ダブレットor真正ダブレット
・トップに天然宝石、ベースに合成宝石orイミテーションの接着は『セミダブレットorセミ真正ダブレット
・トップに無色の天然宝石ベースに着色ガラスの接着は『偽造ダブレット
・トップもベースも着色ガラスの接着は『イミテーション・ダブレット』この場合は、接着剤が着色されているものが多いようです。

?3つの素材を組み合わせて接着している張り合わせは『トリプレット』
一般にクラウン部とキューレットの先端に天然素材を張り合わせている場合が多いようです。

張り合わせ石のまとめ
それは天然宝石の硬度が高いのをうまく利用しています。よく触れ合う部分がガラス素材であれば磨耗に耐えられませんが硬度が高い天然宝石なら磨耗しにくいためです。よくある例は、『オパール・トリプレット』です。オパール・トリプレットは遊色効果を持った薄いオパールを使用している関係で強度的に大きな問題があります。そのため、トップ無色の合成スピネルorクォーツを用いてその欠点を補っています。

このように『張り合わせ宝石』は小さな薄片からより大きな宝石に加工する目的だけでなく強度を増し、宝石の色や外観の改良の目的のためにも作っているものもあります。
張り合わせ宝石は加工された模造宝石ですが、模造なりにその宝石の美しさと耐久性を追及しています。
もちろん、高価な宝石として出回ってはいけませんが、安心して付けられる高価な代用宝石として認知されるようになってほしいと思います。

アベンチュリン・クォーツ

アベンチュリン・クォーツ


アベンチュレッセンスの特殊効果を持った『クォーツ』をアベンチュリン・クォーツといいます。しかし、『グリーン・アベンチュリン・クォーツ』と呼ばれているこの宝石は『クォーツ』とは、ちょっと違います。厳密に言えば『クォーツの変成岩』です。
クォーツと同じ成分から出来ていますが、クォーツのように単結晶ではなく『クォーツの岩』みたいな鉱物です。その鉱物に『緑色の雲母』がはいってキラキラ輝きます。
グリーン・アベンチュリン・クォーツはキラキラと輝くから宝石の仲間に入りますが、そうでないものはグリーン・アベンチュリン・クォーツではなく『インドヒスイ』として『翡翠』の物まねで、デビューしています。でも、いくら物まねをしても『キラキラ』の証拠をルーペで簡単に確認できるのですぐにバレます。

もっと簡単な鑑別は『インドヒスイ』は、『グリーン・アベンチュリン・クォーツ』と覚えて忘れないことです。


キラキラと輝くのを忘れて他人の威厳を借りるのは『インドヒスイ』さんですよ!!

ハックマナイト

12月の誕生石「ラピス・ラズリ」を構成している4つの青い宝石の1つソーダライトに『ハックマナイト』という変種があります。ハックマナイトは、太陽光の『紫外線』に反応し色が変化します。せっかちな方は、「ブラックライト」を当てるとほんの数秒で変化します。ホワイト、ピンク、ブルーのハックマナイトがバイオレットに変化しています。

こんなにも劇的に色が変わる宝石の秘密。

それは、ソーダライトの化学組成の一部がほんの少し置き換わっただけです。たったそれだけで、こんなにも性質が変わるなんて・・・もしかして、自分を変えるのはそんなに大変なことではなくほんの少しの変化と太陽の日差しがあればいいのかも知れませんね。