ダイヤモンド物語その2

試練

「これで、彼も諦めるだろう」と思い安心していた親方でした。
しかし彼は違いました。
死に物狂いでした。
死に物狂いで誰もが無理だと思っている仕事に取り組みました。
無理を承知で、取り組みました。
ここで諦めてしまえば自分の愛する気持ちが、偽りだと思ったからです。


彼は、その日からダイヤモンドを削るためにあらゆる創意工夫、考えられる全ての研磨剤を試しました。
しかし、ダイヤモンドはびくともしません。
ただ無駄な時間だけがそこには、流れているかのようでした。
悩み苦しみ・・諦めかけては、希望を持ち・・
彼は、来る日も、来る日も親方に言われた仕事にただひたすら取り組んでいました。
彼の事をあまり快く思っていなかった親方の娘でしたが、そんなひたむきな彼をただ黙って見ていることは、出来ませんでした。
彼の真剣さは自分に対する愛の真剣さ。。。
彼の不器用な愛し方だと感じたからです。


娘は、いつしか彼のそばにより沿い彼と同じ試練に取り組んでいました。
そのことが、「征服できないもの」の意を持つダイヤモンドを征服できる大事な一歩だとは、まだふたりには知るよしもありませんでした。